背部痛、血尿、下肢の浮腫
このブログはケーススタディを勉強する備忘録ブログです。
61歳男性、3ヶ月続く背部痛、血尿、下腿浮腫を主訴に来院。
61-Year-Old Man With Back Pain, Hematuria, and Lower Extremity Edema. Mayo Clin Proc. 2020 Apr;95(4):801-806.
https://www.mayoclinicproceedings.org/article/S0025-6196(20)30038-0/fulltext
プロブレムリスト
病歴より
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#3ヶ月続く背部痛、血尿、下肢浮腫
#冠動脈疾患の既往
#症候性尿管結石の既往
#背部痛:NRS 8/10、両下肢と左側面に放散する中下胸郭部の疼痛
臥位になると増悪、座位で改善
#痛みどめ(アセトアミノフェン、NSAIDs)、神経刺激、湿布では改善しない
#夜間、痛みで目が覚める
#膀胱直腸障害の訴えはなし
#浮腫は左下肢から始まり、両側になった、サランラップを巻いても浮腫は改善しない
#他院で左鼠蹊リンパ節腫脹を指摘された
#他院の脊椎X線:脊椎の変性変化であった
#常用薬:アセトアミノフェン、イブプロフェン、アスピリン、アトルバスタチン、リジノプリル、メトプロロール
身体所見より
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#下部胸椎に圧痛あり、痛みで横になれない
#浮腫 右 2+/左 4+
#右足 多発する紅斑のある潰瘍
#精巣は異常なし
#直腸診で前立腺は異常で硬い
検査所見より
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#血液検査はおおよそ正常(Hb 12.9, WBC 7000, 血小板 16.3万, Cre 1.36, Ca 9.3, AST 20, ALT 19, ESR 26)
#ALP高値 (ALP 543)
#尿検査:蛋白尿(73mg/dL)、変形のない赤血球尿
#X線:左胸水、下部胸椎に多発する病変
#エコー:左鼠蹊リンパ節 1.9cm、DVTなし
#CT:右水腎症、右膀胱尿管移行部の近くに3-5mmの閉塞性尿管結石あり
#T10、T11の病的骨折、造骨生病変、広範な後腹膜リンパ節、鼠蹊リンパ節の腫脹
診断は?
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転移性前立腺癌
診断に迫る検査
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#PSA 184ng/mL
#左鼠蹊リンパ節生検:前立腺癌の診断
最終診断:前立腺癌、Th10, Th11の骨転移、後腹膜リンパ節・骨盤リンパ節・左鼠蹊リンパ節転移
Learning points
・下腿浮腫はリンパ節転移が原因
・PSA上昇:前立腺肥大、前立腺炎、会陰外傷、唾液腺腫瘍
・前立腺癌の骨転移に対する標準治療:放射線照射
前立腺癌の骨転移に対する他の治療の選択肢として
ビスホスホネート:データがほとんどない、1つのデータでは骨イベント発生率や生存率を改善する結果は証明されなかった
デノスマブ:骨イベント発生率や生存率に関するデータなし
テリパラチドは禁忌(転移を増やす可能性)
・骨転移のある前立腺癌の標準治療: abiraterone/ docetaxel +glucocorticoids with ADT
(STAMPEDE, CHAARTED, and LATITUDE trials)
・Abirateroneには下腿浮腫の副作用があり、今回の患者にはAndrogen deprivation therapy +docetaxel + prostate radiation therapyを選択した
(STAMPEDE trial)
・予後は適切な治療を行えば、15ヶ月(13-17ヶ月)
振り返り
・背部痛、血尿、下腿浮腫をまず一元的に説明できる疾患に前立腺癌があることを想起する
Next Step
・他のがんの最新の治療をup to dateしよう
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