築地の病院総合診療医のブログ

診断推論のケーススタディの備忘録のブログです。(病院や部門を代表したものではなく、個人的な勉強用ブログです。)

全身の皮膚の掻痒感

このブログはケーススタディを勉強する備忘録のブログです。

 

71歳男性、ニューヨーク、9ヶ月続く全身の掻痒感を主訴に来院。

Scratching the surface. Am J Med. 2010 Jan;123(1):22-6. doi:

10.1016/j.amjmed.2009.07.023. PubMed PMID: 20102986.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20102986

 

プロブレムリスト

病歴より

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#全身の掻痒感 (9ヶ月)

#皮疹なし

#呼気の延長
#歩行の不安定

#下肢の感覚の脱落

#四肢の感覚障害 (3年前)

#CIDP

#過去の既往:喘息、副鼻腔炎、HL

DM、前立腺肥大

#内服歴:albuterol, aspirin, atorvastatin, hydrochlorothiazide, ipratropium, metoformin, salmeterol/fluticasone, tamusulosin, and valsartan

ステロイドユーザー(3年前、CIDPのため)

ホンジュラス出身(35年前にNYへ移住)

 

 

検査所見より

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#FEV1低下, FVC低下, FEV1/FVC正常, 吸入薬で反応なし

#白血球増多:18400/mm3

好酸球増多(5年前、3年前から急激に上昇):8100/mm3

#IgE高値:9562IU/mL

#両肺に多発すりガラス

 

陰性所見

#肝機能・腎機能共に正常、#ANCA・抗核抗体共に陰性

HIV陰性、#血清・尿蛋白電気泳動正常、IgA、IgM、IgG正常

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診断に迫る追加検査

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#15ヶ月前のCFの所見は、好酸球腸炎だった、寄生虫の所見なかった

#2年前の寄生虫の便の検査は陰性だった

#糞線虫の抗体が陽性

 

 

 

診断は?

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糞線虫 Strongyloides Stercolaris
 
teaching points
・慢性感染を起こす(65年以上持続感染したケースも)
・移動性の蛇のような掻痒のある皮疹をきたす
・下痢、食思不審、消化不良などの消化器症状をきたす
・hyper infection sydnromeでは致死率が87%(消化管粘膜から細菌の血行感染を起こす)
・便検査で1回で見つかる確率は30%、7回検査をすると感度 100%
・血清学は感度 95%、特異度 30%
特異度が低い(filariasis, schistosomiasis, and Ascaris lumbricoidesとcross reactionするから)
寄生虫感染は特異的なIgEと相関する (治療した後も、残存するが・・・)
 
症例からの振り返り/take home message
ステロイド使用前に渡航歴で、糞線虫を想起する
 
Next step/宿題
ケースではあまり触れられていませんでしたが、
歩行の不安定性、下肢の感覚の脱落、四肢の感覚障害が直近で出現した病歴があったのですがCIDPとアセスメントされていました。 

今回の糞線虫の感染と神経症状は別でよいのか?