築地の病院総合診療医のブログ

診断推論のケーススタディの備忘録のブログです。(病院や部門を代表したものではなく、個人的な勉強用ブログです。)

身体機能の低下

80歳女性、目撃のない転倒で来院。

Functional Decline in an Elderly Patient:Connecting the Dots to Reach the Diagnosis. Am J Med. 2020;133(4):432‐433.e1.

https://www.amjmed.com/article/S0002-9343(19)30763-6/fulltext

 

 

 

病歴より

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#目撃のない転倒で受診

#2週間前より軟便が続き、腸の調子が悪いと感じていた

#身体機能の低下があった

#既往歴:高血圧症、TIA、痛風、慢性的なNSAIDsの使用によるAKI

#常用薬:テルミサルタン 40mg、クロピドグレル 75mg、オメプラゾール 20mg、アロプリノール 150mg、必要時コルヒチン 1000mg

 

 

身体所見より

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#上下肢の近位筋低下

#座位から立位が困難

#母指球にミオトニアがあった

#歩行にはかなりの介助が必要
#腹部平坦・軟、圧痛なし

 

 

検査所見より

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#CK 926、AST 119、ALT 97、Cre 102μmmol/L、CrCl 23

#筋電図:びまん性のミオトニー電位 (myotonic discharges)

 

 

 

 

 

 

 

追加問診は?

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追加問診にて、毎日コルヒチン 1000mgを厳格に内服していたことが判明した

 

 

 

 

 

最終診断は?

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コルヒチン中毒(筋毒性、消化器毒性)

 

 

コルヒチンを中止にして、3ヶ月後の筋電図は正常になった。

 

 

・高齢者の痛風の治療はNSAIDs、ステロイド、コルヒチンとどれも使用しにくい

・CrCl>30はコルヒチンの容量調節不要ではあるが、CrCl<60では慎重投与になっている

・処方する場合は、半年ごとにCKをモニターする必要がある

・クラリスロマイシン、フルコナゾール、アミオダロン、スタチン、フィブラート、シメチジンなどがコルヒチンの濃度をあげる

・消化器症状もコルヒチン中毒と考えられた

 

Up To Dateによると、

コルヒチンの消化器症状の頻度は、26-77%(下痢 23-77%、嘔吐 17%、嘔気 4-17%)

神経症状(頭痛1-2%、倦怠感 1-4%)

痛風(4%)

咽喉頭痛(2-3%)

ケースレポートレベルでは、

脱毛症、無形成性貧血、無精子症、骨髄抑制、皮膚炎、播種性血管内凝固、摂食障害(Syed 2016)、顆粒球減少症、肝毒性、過敏反応、CK増加、血清ALT増加。血清AST増加、乳糖不耐症、白血球減少症、丘疹性発疹、筋肉痛、筋無力症、ミオパチー、筋緊張症、神経障害、乏精子症、汎血球減少、末梢神経炎、非血小板減少性紫斑病、横紋筋融解症、皮膚発疹、血小板減少症、中毒性神経筋疾患

が報告されている

 

 

 

振り返り

・コルヒチンと他の薬剤の組み合わせには注意する必要がある

・コルヒチン単独だけでも定期的に内服しても中毒になることに注意する

・必要時にコルヒチンを内服しているという病歴が目眩しになった

 

 

 

Next Step

・ミオトニー放電を起こす他の疾患は?

臨床的なミオトニアを伴う疾患

筋強直性ジストロフィー

Thomsen病

ミオトニアを伴わない疾患

多発筋炎

高K性周期性四肢麻痺

 

 

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